第8回AAC学生立体アートコンペ 審査結果

「アートのあるライフスタイル」の提案とともに、若手アーティストの発掘・支援・育成を目指して実施している学生限定立体アートコンペ「ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION(AAC)」の最終審査会を、2008年12月19日、東京都杉並区の「アジールコート荻窪」で開催いたしました。
今回で8回目を迎える本コンペは、同年6月から9月までの約3ヶ月間、全国の美術を学ぶ学生から作品を募集。
54点の高レベルな作品が集まった一次審査会で選出された3名が、展示場所となる「アジールコート荻窪」のエントランスホールに、実制作した作品を1点ずつ仮設置してプレゼンテーションを行いました。厳正な審査の結果、以下のように受賞作品が決定いたしましたのでご紹介します。

最優秀賞


■ 小椋 聡子さんの喜びの声
このような大きな賞をいただきまして、本当にありがとうございました。
今年はとても忙しく、その中で自分の作品を評価されることが、こんなに嬉しいとは思いませんでした。感謝の気持ちでいっぱいです。学校で授業を受けている時など、150キロのブロンズを溶かしたり、朝から晩まで作業を続けたりした事などが作品に生かされたのでないかと思いました。これからもずっと走り続けて行こうと思います。初めてこの様な賞をいただいたので本当に嬉しいです。ありがとうございました。

作品タイトル: 「ゆるやかなときのながれのなかで」
小椋 聡子(おぐら さとこ)
東京芸術大学大学院 美術研究科
博士後期課程 研究領域 工芸  鋳金
■ 審査員長コメント / 酒井 忠康 氏
最優秀賞を受賞された小椋さんの仕事は、工芸といっても、工芸の中にとどまるものではなく、工芸の世界から色々な社会、自然環境、あるいは住空間に繋がっていこうというのが窺えました。この物件のある杉並の界隈を様々な側面から観察し、作品に活かしてプレゼンを行っていた。人間の感覚に柔らかく訴えてくる仕事。そこが審査員のみなさんの評価を得たのでしょう。
■ 最終設置作品

優秀賞


作品タイトル: 「Wall」
三上 賢治(みかみ けんじ)
広島市立大学大学院
芸術学研究科 総合造詣芸術
博士後期過程1年
■ 三上 賢治さん
どうもありがとうございます。
僕は普段、広島の山の上で制作していて、そういうところで制作していると自分の作品が良いのか悪いのか、よくわからなくなるので、今回の授賞は本当に励みになります。
これからも良い作品を作ってがんばっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
■審査員長コメント / 酒井 忠康 氏
三上さんの仕事は石の仕事です。実に巧みな技術を身につけていて、プロの石彫家でも、このレベルの仕事をする人はそう多くいないでしょう。大いに期待できます。ではなぜ、今回、三上さんの仕事が選ばれなかったか。それは、作品が空間にもったいないという理由からです。「もっと相応しい空間があったら、この作品がもっと活きてくる」ということで残念ながら最優秀賞受賞には至らなかった。決して三上さんの仕事が劣ったというわけではありません。今後、三上さんも色んなお付き合いがあるでしょう。相手に妥協するということは良いことではないですが、相互の緊張関係を持続する勉強をしてもらえればいいなと思いました。
 

作品タイトル: 「ときのなみ」
奥村 太郎(おくむら たろう)
京都市立芸術大学
美術研究科 彫刻 院1回生
■ 奥村 太郎さん
このような賞をいただき、ありがとうございました。
公共の場に設置すること、それを考え、制作して、そして最後に審査の場で素晴らしいコメントをいただき感謝しています。
この経験を活かし、今後も制作活動を続けて行きたいと思います。
■審査員長コメント / 酒井 忠康 氏
奥村さんの仕事は、私たちが暮らしの中で使っているプラスチック製品を集めて溶かし込んだ作品です。非常に発想が斬新で、形も今日的なセンスに満ちていて、非常に面白い。一次審査の段階から、そういったことを我々は感じていました。ただ、奥村さんの仕事は、外側の世界との関わり方が多少まだぎこちないところがあったかなと。センスの良さと面白さは期待させるものがあり、この素材を活かした技法は大変興味深いところへ着眼されているので、これから良い仕事を色んな形で体験して欲しいと思います。

プレゼンテーション・審査風景

AAC2008総評

■ 酒井 忠康 / 審査員長 世田谷美術館館長・美術評論家
 
コンペの賞というのは、受賞された人が今後、良いお仕事をされて、賞の価値を高めていくものです。このAACコンペが今後、色んな形で注目を浴びるというのは、受賞された方々の謳い方にもよるといっても過言ではありません。
芸術的な仕事と建築の空間との出会いの場でコンペが行われて、56点の応募作品があって、そこから10点選ばれ、次の段階で3点に絞って実制作をお願いした。今日は最終的に1点に絞らなくちゃいけない。大変困りました。
最優秀賞をとった作品は、大変手の込んだ手技を大事にする仕事です。決してこの工芸の世界で保護されているということではなく、そこから大きく羽ばたいて行こうという、まさに「巣立ちの時期」の仕事をされている。
私は美術館で仕事をしています。多くの作家は羽ばたく前の段階で、親や色んな人たちにお世話になって成長していく。その次の段階で、巣立ちの時期があって自立する。自立の時期というのは、作家が本格的にお仕事をはじめる時期と考えてよいでしょう。
20世紀にルーマニアにブランクーシという彫刻家がいました。新しい彫刻の流れを形成した彫刻家なのですが、ルーマニアで育って、ロダンに憧れてパリに出ます。彼の有名な言葉で、「大樹の下では新芽は育たない」というのがありますが、これは「ロダンという大きな木の下(もと)にいたのでは、新しい芽は育たない」という意味で、ブランクーシはロダンの下を出たのです。このことにより「ロダンに対し反旗を翻した」と解釈される場合もあります。しかし、私はそう思わない。彼はロダンを尊敬していた。色んな意味でお世話になったけど、そのまま彼の下にいたのではダメだ。自発的に自立しようとロダンの下を離れて行ったと私は解釈しています。そして彼は新しい20世紀の造形の基礎になるところを開発し、抽象的な仕事へ突き進んでいきます。
今回、プレゼンテーションを行った学生さんたち3人と、入選された10人の方もそうだと思うのですが、作品を拝見し「ぼつぼつ巣立ちの時期にさしかかった頃かな」と思いました。
若い才能をこれから自家発電させて、皆さんには、さらに良い仕事をしてもらいたいと思います。
最終審査結果発表
表彰式・授賞式
表彰式・授賞式 AAC2008
表彰式・授賞式 AACポスターコンペ2008
懇親会