第14回 学生立体アートコンペ「AAC2014」 審査結果


「アートのあるライフスタイル」の提案とともに、若手アーティストの発掘・支援・育成を目指して実施している学生限定立体アートコンペ「ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION(AAC)」の最終審査会を、2014年11月27日、東京都台東区の「新御徒町Ⅱプロジェクト(グランドコンシェルジュ新御徒町アジールコート)」で開催いたしました。
今回で14回目を迎える本コンペは、同年4月から6月までの約3ヶ月間、全国の美術を学ぶ学生から作品を募集。
62点のハイレベルな作品が集まった一次審査会で選出された3組が、展示場所となる「新御徒町Ⅱプロジェクト(グランドコンシェルジュ新御徒町アジールコート)」のエントランスホールに、実制作した作品を1点ずつ仮設置してプレゼンテーションを行いました。厳正な審査の結果、以下のように受賞作品が決定いたしましたのでご紹介します。

最優秀賞

       

「UNTITLED」
井田 大介(いだ だいすけ)
東京藝術大学大学院 美術研究科 彫刻専攻
■井田 大介さんのコメント
この度は素晴らしい賞を頂きありがとうございました。
今回の作品はマンションのエントランスの空間と時間を変化させるというコンセプトで制作しました。
見た目が派手なこともあり、居住者の方に寄り添うような作品ではなかったのですが
選んで頂き嬉しく思います。
これを励みにこれからも頑張ろうとおもいます。ありがとうございました。

■ 審査員コメント
深いブルーのパネルに3Dプリンタで作成した樹脂製の蘭の花がそえつけられている、非常にインパクトのある、ちょっと妖艶な感じもするとても魅力的な作品でした。
「時間と空間をゆがめていく」といったコンセプトもユニークで、非常にオリジナルな発想に基づいた作品であると思いました。
マンションのエントランスという半公共的な空間ですが、そこを通リかかる住民が、強いインパクトを持って受けとめるだろう作品だと思います。
今回、非常に拮抗したコンペティションではありましたが、視覚的な強さで一歩先んじていたのではないかという印象を持ちました。
(審査員長:塩田 純一)

マンションのエントランスに設置された作品は、美術館で鑑賞するのとは違う鑑賞体験にさらされます。毎日住民が行き来する場所に、井田さんのかなり強い表現の作品が展示されることについて、住人の人たちが楽しみ、受け入れることができるのか、という点は気になりました。
これまでこのコンペティションに提出される案で多かったのは、自宅に帰ってきたときにほっとしてもらいたい、癒されるといったコンセプトのものでした。ただ、幸いにもこのマンションは若い単身者を対象にしていることもあり、井田さんの作品はむしろ、見る人や住んでいる人に刺激を与えたいという、チャレンジングなものでした。それが作品の完成度でも表現されていたので、評価したいなと感じました。
作品自体のコンセプトもしっかりしていて、作家としての将来性という面でも頭一つ抜けているかなと思い、今回、最優秀賞に推しました。
(審査員:岩渕 貞哉)

審査員のみなさんが、「インパクトのある作品」と評価されていたのに、私も同感です。一見、ごくシンプルでありながら、近くで見たときの花びらの質感の豊かさ、遠くで見たときの青と黄色の色彩の対比効果、遠近どちらからも観賞が楽しめて見る者を飽きさせない作品です。エントランスに置かれた時に、その前をただ通りすぎることができないのではと思わせてしまうのも、重要なポイントです。マンションに来た方も、おそらく住人に対して「これなに?」と質問をすると思います。住人だけではなく、、マンションへの来客が必ず目に留める。「どうしてここに蘭があるのか」「なぜこのような不思議な質感なのか」「なぜ蘭なのに黄色なのか」など様々な会話が生み出される場面が想像できます。コミュニケーションを生み出すカンパセンション・ピースになりえる点で、マンションのエントランスに置くにふさわしい公共性を秘めた作品と言えるでしょう。
(審査員:森 千花)



優秀賞


「見つめる」
穴井 麻美(あない まみ)
多摩美術大学大学院美術研究科 工芸専攻 
■ 穴井 麻美さんのコメント
今回、優秀賞を頂くことができ、大変光栄です。
学校の中でしかほとんど作品を見せる場がなかった私にとって、実際のマンションに設置する作品を
制作することは初めてでした。
審査の日は、たくさんの方や審査員の方に作品を見て頂き、自身の分野以外の声を多々お聞きすることが
出来たのでとても勉強になりました。
今回、AACで学んだこと、そして反省をこれからに生かしていきます。
どうもありがとうございました。
■ 審査員コメント
非常に繊細な形の感覚を持った作品で、熱線反射ガラスを使った作品です。
全体のフォルムもそうですが、表面の屈曲とか、流れるようなリズム感など、細やかな神経の行き届いた非常に良い作品だなと思います。
ガラス素材は、公共の場に設置する作品によく用いられる素材ではありますが、月並みな表現に陥ることなく、ユニークな個性が発揮された作品でした。
(審査員長:塩田 純一)

プレゼンテーションの際に、照明をどこから当てるかが話題になっていました。これは単に作品の見え方や好みの問題ではなく、作品のコンセプトに関わる本質的な問題と感じました。
「見つめる」というタイトルにもあったように、ガラスがレンズの効果を生んで通りがかる人が映り、それを住人や鑑賞者が見つめるというコンセプトでした。ただ、実際の作品を見てみると前方から照明を当てて、流線の美しさ、ガラスという本来固いものが水のように流動的に滑らかに見える、その効果が勝っていたと思います。
最初に立てていたコンセプトと作品を実際に見た時のずれが、最終的な判断のとろこで差が出ました。それでも、作品自体は完成度の高い作品だと思います。
(審査員:岩渕 貞哉)

一次審査でプレゼンシートを拝見した時には硬質でシャープな感じの作品ではないかなと想像していましたが、実際にはガラスとは思えない非常に柔らかな感覚に富んでいて、しかもそこから生まれる、流れるような躍動感に意外性があり、作品として完成度の高いものだと感じました。
マンションにはガラスがたくさんあり、日常的に私たちが親しんでいる素材ではあるのですが、エントランスにあの作品が展示されることにより、ガラスの硬くて冷たいものという従来のイメージが一新されることでしょう。また近くで鑑賞した場合、自分の姿も反射で映り込んでしまうというユニークな効果もあり、住んでいる人の意識に見る度に積極的に働きかける点に感銘を受けました。
(審査員:森 千花)




「フォトンの日々」
進藤 篤(しんどう あつし)
東京藝術大学大学院 美術研究科 デザイン専攻
山崎 明史(やまざき あきふみ)
日本大学大学院 芸術学研究科 造形芸術専攻
前原 良平(まえはら りょうへい)
日本大学 生産工学部 創生デザイン学科 3年
横田 安紀(よこた あき)
日本大学 生産工学部 創生デザイン学科 4年
■ 進藤 篤 さんのコメント
今回はこのような素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。
今回は4人での作品制作だったので、一緒に作った3人にとても感謝しています。
私たちが作ったものは空間作品でした。
今回のようなインスタレーション性の高い作品はそもそも一時的な作品であったり、コンテンポラリーなものである、というような常識があるように感じていたので、恒久設置を目的とした本コンペでは一次審査の段階で通過する事が難しいのではないかという思いがありました。
ですが、こうやって実制作をさせて頂いたことも含めて、インスタレーションであるとか、空間作品という領域の部分で、少し時代が進んでいる結果としての受賞なのかなと、そういう実感をいただくこが出来ました。
審査員の皆様方にも言われたとおり、今回の制作で気づいたことを踏まえ、もう少し良くしていきたいと思っております。
ありがとうございました。

■ 山崎 明史 さんのコメント
今回はこのような賞をいただき、誠にありがとうございました、
普段は、ステージ上や、美術館の中で作品んを設置することがほとんどです。
今回マンションのエントランスという場所で設置をさせていただいて、道からマンションのエントランスの中を見ると、自分達の作品が置かれていて不思議な感じがしました。
この作品が誰かの生活の一部になる可能性があるのかもしれないという期待が感じられ、今迄にない経験でした。
今回はこのような機会をいただき、誠にありがとうございました。

■ 前原 良平 さんのコメント
今回はこのような素晴らしい賞をいただき、ありがとうございます。
普段はCADやプログラミングをもちいて課題に取り組んでいます。
アートとは違うかもしれないのですが、今回チームで制作出来た事がとても嬉しかったです。
貴重な経験ありがとうございました。

■ 横田 安紀 さんのコメント

この度は、このような賞をいただき、誠にありがとうございました。
マンションのエントランスに飾る作品という人々の生活に反映していくようなものを実際に作ることが出来た事が、今後の自分自身のものづくりに強く影響を与えてくれる経験であったと感じています。
このような経験をさせていただいて、ありがとうございました。

■ 審査員コメント

日常的に目にするスーパーボールという素材を使って、ともて軽やかで繊細なさわやか感じの作品だったと思います。
最初プランを見たときに懸念していたメンテナンス性についてもある程度解決がなされていたのではと思います。
(審査員長:塩田 純一)

若い人が住むマンションに、若い人の感性で明るい気持ちになれる作品であり、エントランスにとてもフィットする作品だと感じました。将来性も考えながら選ぶ段階で気になったのは作家性の問題です。アーティストとして今後作品を作り続けていくにあたり、このユニット名のない4人連名にグループの作家性はどこにあるのかということが、若いアーティストの才能を発掘するという点で少しひっかかりました。
(審査員:岩渕 貞哉)

正直に申し上げて、プレゼンシートでは本当に実現するのかと懸念していた作品でした。スーパーボールという素材をマンションに持ち込むアイデア、そしてそれを大量に散りばめるという使い方も非常に斬新で面白いので、もし実現したら画期的な作品になるではと期待もしておりました。
透明なアクリル板の軽やかさとスーパーボールに不思議なエネルギーの満ちた良い作品に仕上がったと思います。おそらくこの作品は、スーパーボールの大きさや、アクリル板の幅や厚さを今後様々に変えて実験することで、よりダイナミックで、さらに浮遊感に満ちた作品に変貌する余地があるでしょう。3作品の中では、技術的にもコンセプトの面からも最も挑戦的な作品であると思います。今後の可能性に期待しております。
(審査員:森 千花)

プレゼンテーション・審査風景

    

    

AAC2014総評

■ 塩田 純一 / 新潟市美術館館長、美術評論家

私は新潟市美術館で館長を務めておりますが、その他に愛知県立芸術大学、多摩美術大学でも客員教授を務めております。
普段、日常的に美術を学んでいる学生と接する機会が多いのですが、このAACマンションというプライベートであり、且つ公共性の高い空間に作品を設置するという前提で、作品プランを練り、実際の作品を制作するということで、美術を勉強されている学生にとっては、実践的な経験を積める貴重な場になっているのではないかという印象を持ちました。
一次審査の結果で7人の方が入選となり、特に優れた3組が最終審査に残ったわけです。
最終審査で実際の作品を前にしてのプレゼンテーションで、それぞれの作品の制作意図が大変よく伝わってきました。それぞれとても魅力的な作品でした。甲乙つけがたい作品で、なかなかまとまらなかったのですが、最終的に井田さんの「UNTITLED」を最優秀賞に選びました。


最終審査結果発表
表彰式・授賞式 懇親会